おすすめの名曲
ピアノ三重奏曲は、その名称が示す通りピアノを含む3つの楽器で奏される作品で、基本的にはピアノのほかにはヴァイオリンとチェロが用いられます。室内楽曲として決して看過できないジャンルでありながら、現在、独奏や四重奏などに比べコンサートなどで取り…
映画「アマデウス」の中では、モーツァルトの曲が実に上手く―もっとも、史実に即しているわけではありません―援用されていますが、現在「セレナード 第10番 変ロ長調 K.361(370a) "グラン・パルティータ"」と呼ばれる作品もその一つと言えるでしょう。モーツ…
今回は、既に次の二つの記事でも少し触れた「交響曲 第31番 ニ長調 K.297(300a) "パリ"」をご紹介しましょう。この作品については、作曲動機・時期ともにはっきりしており、母マリア・アンナとともに職を求めて訪れた花の都パリにおいて、当地の公開演奏会ル…
作曲家が、あるジャンルの作品を集中的に書き、それらがまとまったグループを成すのは広く見られることです。その因としては、特定の作品領域における書法を己のものとするための修練、あるいは誰かに作品を献呈しようとの意図といった内面的動機のほか、音…
モーツァルトが、偉大な先達ハイドンに献呈すべく積み上げてきた六つの弦楽四重奏曲の最後、「ハ長調 K.465」を書き上げたのは1785年1月14日、一つ前の「イ長調 K.464」の四日後のことでした。といっても、イ長調の筆を置いた後にハ長調に着手し、わずか四日…
「弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 "狩"」により、謂わばこのジャンルの新たな可能性と自らのアイデンティティとの両立を成し遂げ、明るい陽光の下、色彩に満ちた世界を提示したモーツァルトですが、その二ヶ月後の1785年1月10日の日付とともに自作品目…
モーツァルトがヨーゼフ・ハイドンの作品に啓発されて彫心鏤骨の末書き上げ、その先輩に献呈した六つの弦楽四重奏曲、いわゆるハイドン・セットの中で、最もモーツァルトらしさの感じられるものとして、現在一般的に同セットの第4番に位置付けられている「変…
もうかなり前に、モーツァルトの手掛けた作品ジャンルの一つとしてヴァイオリン・ソナタの概略は述べた一方、このジャンルに属する個別の作品についてはまだ取り上げていないことに気付いたので、今回はそれを果たすべく、「ピアノとヴァイオリンのためのソ…
フランスの劇作家・詩人にして、音楽・美術に関しても優れた評論を物したアンリ・ゲオンは、その著「モーツァルトの散歩」(1932年)において、この天才作曲家の音楽に具わる特質の一つを、「流れゆく悲しさ(tristesse allante)」「爽快な悲しさ(allegre trist…
現在、ハイドン・セット第3番として広く知られる「弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428(421b)」には、その作曲順序および同セットにおける位置付けに関して、別の見解があります。まず、作曲された時期について言うと、これを明に示す資料が欠けているため定…
現在、モーツァルトのセレナードには13までの番号が付されていますが、その末尾に位置する10, 11そして12番は管楽のための作品、いわゆる"Wind Serenades"となっています。これらの内、最大の規模を誇り、そしておそらく最も有名なものは、「第10番 変ロ長調…
モーツァルトの生きた時代には、まだ音楽家に仕立て職人的な性格が少なからず求められていました。そしてこの要求に応える形で、セレナード・ディヴェルティメント・カッサシオンといったいわゆる機会音楽、すなわち式典や祝祭・祝宴を彩るための作品を、モ…
先に以下の記事でもご紹介したように、モーツァルトは27ものピアノ協奏曲を、少年期から晩年まで、その短い生涯全体を通じて書いた一方、ヴァイオリン協奏曲はわずか5曲を青年期に残したのみです。しかしながら、今一つ、独奏楽器としてヴァイオリンにヴィオ…
現在番号付けられているモーツァルトの27のピアノ協奏曲群において最も壮麗な連嶺を成しているのは、自ら企画主催した予約演奏会のために書かれた第14番から第25番までの12曲で、特に後半の6曲は一際の威容を見せていると言うことができると思います。その最…
「ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467」の次にモーツァルトの書いたこのジャンルにおける作品は、その9ヵ月後の1785年12月16日に完成された「第22番 変ホ長調 K.482」で、さらにそれから4ヶ月を経た翌1786年3月2日には「第23番 イ長調 K.488」がものされていま…
不穏なシンコペーションの旋律により、暗い宿命に対する人間の根源的情念とでも言うべきものを見事に描いた「ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466」のわずか一ヶ月後、モーツァルトはその対極に位する感のある、清澄な光に満ちた同じジャンルの作品を世人の前に…
ごく幼い頃から類稀な楽才を見せ、8歳で交響曲、11歳ではオペラを作曲したモーツァルトですが、一台のピアノで奏されるピアノ・ソナタのジャンルへ足を踏み出したのは意外と遅く(彼にしては)、少年から青年への移行期ともいえる、18歳の暮れから翌年初めにか…
よく知られているように、モーツァルトの作品においては、長調を採ったものがその大部分を占めています。しかしながら、舞曲のような完全な娯楽音楽を除き、各ジャンルの中にわずかながら置かれた短調作品が、それ自体として印象的な光彩を放つと同時に、周…
これまでにも何度か書いたように、1784年、モーツァルトは自身の作品を目録に記録し始めるとともに、自らの企画・主催による予約演奏会を開始しました。これら一見ごく些細な出来事は、しかしモーツァルトの生涯、延いては音楽の歴史において一つの画期をな…
第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成で奏される弦楽四重奏曲が西洋音楽において重要な位置を占めており、質・量ともに極めて多彩豊麗な作品の書かれていることは改めて言うまでもないでしょうが、ここにヴィオラもしくはチェロのパー…
今回は、知られざる名品、あるいは、知る人ぞ知る傑作というべき二曲をご紹介したいと思います。その作品は、「グラスハーモニカのための五重奏曲(アダージョとロンド) K.617」、および「同アダージョ ハ長調 K.356(617a)」。しかし、本題に入る前に、グラス…
前々回、および前回にご紹介した2つの交響曲、すなわち「第25番 ト短調 K.183(173dB)」と「第29番 イ長調 K.201(186a)」の間に、モーツァルトは別ジャンルにおいても一つの金字塔を打ち立てています。それが今回取り上げたい、「ピアノ協奏曲 第5番 ニ長調 K…
前記事でご紹介した「交響曲 第25番 ト短調 K.183(173dB) "小ト短調"」が書かれてからほぼ半年後の1774年4月6日、音楽のもう一つの至宝が新たに顕現しました。同じ交響曲ジャンルにおける「第29番 イ長調 K.201(186a)」がそれです。前記事でも述べたように、…
冬、凍てつくウィーンの夜―オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の序曲とともに、「モーツァルト、赦してくれ!」との絶叫がある邸から響く―その出所である部屋に駆け付けた執事と従僕が、主人の好物であるスイーツを持参したことを告げ、ドアを開けるよう懇請する…
先にご紹介した「セレナード 第7番 ニ長調 K.250(248b) "ハフナー"」に並ぶ、このジャンルにおけるモーツァルトの大きな作品として、「第9番 ニ長調 K.320 "ポストホルン"」があります。ポストホルンとは、モーツァルトの時代、郵便馬車がその出発や到着を知…
…そんなディヴェルティメントの中で、モーツァルトの最後に手掛けた作品が、今回ご紹介する「変ホ長調 K.563」です。この曲は、「弦楽三重奏のためのディヴェルティメント」、あるいは「ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのためのディヴェルティメント」などと…
現在、モーツァルトの作品で"ハフナー"という標題を冠して呼ばれるものは2つあります。一つは「交響曲 第35番 ニ長調 K.385」、そしてもう一つが、今回ご紹介する「セレナード 第7番 ニ長調 K.250(248b)」です。これらは、作曲時期こそ、それぞれ1782年、177…
モーツァルトは、27ものピアノ協奏曲を書いた一方、ヴァイオリン協奏曲はわずか5曲しか残していません。そしてそれらは、207, 211, 216, 218, 219というケッヘル番号が示している通り、第1番のみが1773年に、残りは1775年に、一気呵成といった感じで書かれま…
過日、以下の記事でも書きましたが、クラシック音楽の作品ジャンルの一つとして、卒業や結婚といった比較的カジュアルな祝宴に彩を添えることを目的とし、主に室内において演奏されるディヴェルティメント(喜遊曲)があります。その性格上、同種のものである…
モーツァルトの「おすすめの名曲」としてこれまでご紹介してきたのは、主にいわゆる有名どころなので、今回はやや知名度は低いもののぜひ聴いておきたい、「知られざる名曲」的な作品を取り上げたいと思います。それは、"ケーゲルシュタット"あるいは"ケーゲ…