モーツァルト・カフェ|名曲・おすすめ作品・エピソードなど

不世出の天才作曲家W.A.モーツァルト。その名曲・代表作・おすすめ作品をはじめ、生涯や音楽上のエピソードなどをご紹介します。

ピアノ・ソナタ 第6番 ニ長調 K.284(K6.205b)

1774年、18歳になった青年音楽家モーツァルトの元に、バイエルン選帝侯マクシミリアンIII世ヨーゼフから謝肉祭用イタリア語オペラの作曲依頼が届きました。もちろんモーツァルトはこれを快諾して鋭意作曲に取り組み、オペラ・ブッファ(喜歌劇)「偽の女庭師 K…

ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488

「ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482」の完成から三ヵ月半後、オペラ「フィガロの結婚」の制作も佳境に入った1986年3月に、モーツァルトは新たに二つのピアノ協奏曲を書き上げました。その内の一つが、今回ご紹介する「ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488」…

ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482

(これらの間には)対照性と類似性の関係構造を認めることができるのではないか――と先にご紹介した四つのピアノ協奏曲、「ハ長調 K.467」「ニ短調 K.466」「ハ短調 K.491」および「ハ長調 K.503」に時期的に含まれる形で、モーツァルトはさらに二つのピアノ協…

Mozartゆかりの都市(8)―ライデン、ハーグ、アムステルダム

1765年7月24日、モーツァルト一家は一年三ヵ月に亘り滞在したロンドンを後にし、リール、ヘント、アントワープを経てオランダに入り、ライデン、ハーグ、アムステルダムといったオランダの都市に合わせて半年ほど留まりました。もっとも、このオランダへの立…

ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478

意外に思われるかもしれませんが、ピアノ四重奏曲という形式が西洋音楽において占める比重は決して大きなものではありません。白状すると、私は長い間、前回ご紹介したピアノ三重奏曲よりもこちらの方がより標準的で重要なものと思っていました。実際にはそ…

ピアノ三重奏曲 第3番 ト長調 K.496

ピアノ三重奏曲は、その名称が示す通りピアノを含む3つの楽器で奏される作品で、基本的にはピアノのほかにはヴァイオリンとチェロが用いられます。室内楽曲として決して看過できないジャンルでありながら、現在、独奏や四重奏などに比べコンサートなどで取り…

セレナード 第10番 変ロ長調 K.361(370a) "グラン・パルティータ"

映画「アマデウス」の中では、モーツァルトの曲が実に上手く―もっとも、史実に即しているわけではありません―援用されていますが、現在「セレナード 第10番 変ロ長調 K.361(370a) "グラン・パルティータ"」と呼ばれる作品もその一つと言えるでしょう。モーツ…

交響曲 第31番 ニ長調 K.297(300a) "パリ"

今回は、既に次の二つの記事でも少し触れた「交響曲 第31番 ニ長調 K.297(300a) "パリ"」をご紹介しましょう。この作品については、作曲動機・時期ともにはっきりしており、母マリア・アンナとともに職を求めて訪れた花の都パリにおいて、当地の公開演奏会ル…

交響曲 第34番 ハ長調 K.338

作曲家が、あるジャンルの作品を集中的に書き、それらがまとまったグループを成すのは広く見られることです。その因としては、特定の作品領域における書法を己のものとするための修練、あるいは誰かに作品を献呈しようとの意図といった内面的動機のほか、音…

Mozartゆかりの都市(7)―ロンドン

これまでにも何度かご紹介したように、ヴォルフガングと姉ナンネルの楽才を広く世に知らしめるべく、1763年6月9日、レオポルトは一家を引き連れて「西方への大旅行」に出発します。そして第一の主要目的地たるパリへ同年11月19日に足を踏み入れて五ヶ月ほど…

弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K.465 "不協和音" (ハイドン・セット第6番)

モーツァルトが、偉大な先達ハイドンに献呈すべく積み上げてきた六つの弦楽四重奏曲の最後、「ハ長調 K.465」を書き上げたのは1785年1月14日、一つ前の「イ長調 K.464」の四日後のことでした。といっても、イ長調の筆を置いた後にハ長調に着手し、わずか四日…

弦楽四重奏曲 第18番 イ長調 K.464 (ハイドン・セット第5番)

「弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 "狩"」により、謂わばこのジャンルの新たな可能性と自らのアイデンティティとの両立を成し遂げ、明るい陽光の下、色彩に満ちた世界を提示したモーツァルトですが、その二ヶ月後の1785年1月10日の日付とともに自作品目…

弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 "狩" (ハイドン・セット第4番)

モーツァルトがヨーゼフ・ハイドンの作品に啓発されて彫心鏤骨の末書き上げ、その先輩に献呈した六つの弦楽四重奏曲、いわゆるハイドン・セットの中で、最もモーツァルトらしさの感じられるものとして、現在一般的に同セットの第4番に位置付けられている「変…

ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第40番 変ロ長調 K.454

もうかなり前に、モーツァルトの手掛けた作品ジャンルの一つとしてヴァイオリン・ソナタの概略は述べた一方、このジャンルに属する個別の作品についてはまだ取り上げていないことに気付いたので、今回はそれを果たすべく、「ピアノとヴァイオリンのためのソ…

交響曲 第40番 ト短調 K.550

フランスの劇作家・詩人にして、音楽・美術に関しても優れた評論を物したアンリ・ゲオンは、その著「モーツァルトの散歩」(1932年)において、この天才作曲家の音楽に具わる特質の一つを、「流れゆく悲しさ(tristesse allante)」「爽快な悲しさ(allegre trist…

Mozartの出会った人々(7)―ヨーゼフ2世

後に神聖ローマ帝国皇帝、オーストリア大公、ハンガリー王、ボヘミア王となるヨーゼフ2世は、ローマ皇帝フランツ1世とマリア・テレジアの長男として1741年3月13日に生を享けました。当時大きな潮流としてヨーロッパに浸透していた啓蒙思想を信奉するヨーゼフ…

弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428(421b) (ハイドン・セット第3番)

現在、ハイドン・セット第3番として広く知られる「弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428(421b)」には、その作曲順序および同セットにおける位置付けに関して、別の見解があります。まず、作曲された時期について言うと、これを明に示す資料が欠けているため定…

セレナード 第12番 ハ短調 K.388(384a) "ナハトムジーク"

現在、モーツァルトのセレナードには13までの番号が付されていますが、その末尾に位置する10, 11そして12番は管楽のための作品、いわゆる"Wind Serenades"となっています。これらの内、最大の規模を誇り、そしておそらく最も有名なものは、「第10番 変ロ長調…

ディヴェルティメント 第15番 変ロ長調 K.287(271H) "第2ロドロン・セレナード"

モーツァルトの生きた時代には、まだ音楽家に仕立て職人的な性格が少なからず求められていました。そしてこの要求に応える形で、セレナード・ディヴェルティメント・カッサシオンといったいわゆる機会音楽、すなわち式典や祝祭・祝宴を彩るための作品を、モ…

ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364(320d)

先に以下の記事でもご紹介したように、モーツァルトは27ものピアノ協奏曲を、少年期から晩年まで、その短い生涯全体を通じて書いた一方、ヴァイオリン協奏曲はわずか5曲を青年期に残したのみです。しかしながら、今一つ、独奏楽器としてヴァイオリンにヴィオ…

Mozartゆかりの都市(6)―パリ

実質的な世界大戦となった七年戦争が終結を見て間もない1763年6月9日、レオポルトは7歳のヴォルフガングと姉ナンネルの楽才を広く世に知らしめようとの目的を胸に抱いて、一家揃ってのいわゆる「西方への大旅行」に出発し、ミュンヘン・フランクフルト・アン…

ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503

現在番号付けられているモーツァルトの27のピアノ協奏曲群において最も壮麗な連嶺を成しているのは、自ら企画主催した予約演奏会のために書かれた第14番から第25番までの12曲で、特に後半の6曲は一際の威容を見せていると言うことができると思います。その最…

ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491

「ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467」の次にモーツァルトの書いたこのジャンルにおける作品は、その9ヵ月後の1785年12月16日に完成された「第22番 変ホ長調 K.482」で、さらにそれから4ヶ月を経た翌1786年3月2日には「第23番 イ長調 K.488」がものされていま…

ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467 "エルヴィラ・マディガン"

不穏なシンコペーションの旋律により、暗い宿命に対する人間の根源的情念とでも言うべきものを見事に描いた「ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466」のわずか一ヶ月後、モーツァルトはその対極に位する感のある、清澄な光に満ちた同じジャンルの作品を世人の前に…

ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 K.279(189d)

ごく幼い頃から類稀な楽才を見せ、8歳で交響曲、11歳ではオペラを作曲したモーツァルトですが、一台のピアノで奏されるピアノ・ソナタのジャンルへ足を踏み出したのは意外と遅く(彼にしては)、少年から青年への移行期ともいえる、18歳の暮れから翌年初めにか…

Mozartの出会った人々(6)―ヨハン・クリスティアン・バッハ

モーツァルトの先達たる作曲家の内、当時の人気については一先ず措くとして、現在の観点から最も高く評価されるのはヨハン・セバスチャン・バッハ(1685年3月31日-1750年7月28日、いわゆる大バッハ)と言ってまず異論は出ないでしょう。この大作曲家から大きな…

弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K.421(417b) (ハイドン・セット第2番)

よく知られているように、モーツァルトの作品においては、長調を採ったものがその大部分を占めています。しかしながら、舞曲のような完全な娯楽音楽を除き、各ジャンルの中にわずかながら置かれた短調作品が、それ自体として印象的な光彩を放つと同時に、周…

ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466

これまでにも何度か書いたように、1784年、モーツァルトは自身の作品を目録に記録し始めるとともに、自らの企画・主催による予約演奏会を開始しました。これら一見ごく些細な出来事は、しかしモーツァルトの生涯、延いては音楽の歴史において一つの画期をな…

弦楽五重奏曲 第2番 ハ長調 K.515

第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成で奏される弦楽四重奏曲が西洋音楽において重要な位置を占めており、質・量ともに極めて多彩豊麗な作品の書かれていることは改めて言うまでもないでしょうが、ここにヴィオラもしくはチェロのパー…

グラスハーモニカのための五重奏曲(アダージョとロンド) K.617、同アダージョ ハ長調 K.356(617a)

今回は、知られざる名品、あるいは、知る人ぞ知る傑作というべき二曲をご紹介したいと思います。その作品は、「グラスハーモニカのための五重奏曲(アダージョとロンド) K.617」、および「同アダージョ ハ長調 K.356(617a)」。しかし、本題に入る前に、グラス…