交響曲(シンフォニー)は、クラシック音楽のなかでもっともよく知られた楽曲といってよいでしょう。
一般に、交響曲は3つまたは4つの楽章からなり、そのうち最低1つがソナタ形式(これについては今後追ってご説明する予定です)をとります。
テンポの速い楽章を急、遅いものを緩で表した場合、イタリアの交響曲は「急―緩―急」、フランスでは「緩―急―緩」の形をなすことが多いのですが、もちろん固定したものではありません。
さらに、モーツァルトも属する古典派の作曲家たちによって完成された交響曲は、「急(ソナタ形式)―緩(変奏曲または複合三部形式)―メヌエット―急(ソナタ形式またはロンド形式)」を基本とし、これはウィーン流と呼ばれることもあります。
そして、普通、交響曲は指揮者のもと、編成の大きなオーケストラによって演奏されることは、ご存じのとおりです。
さて、モーツァルトはその生涯において交響曲を41曲残したと言われます。
この「41」という数字は、モーツァルトの交響曲が「交響曲第41番 ジュピター」まであるためですが、この番号はモーツァルト自身が付したものではなく、19世紀になってつけられたものなのです。
研究が進むにつれて、作品の分類や真贋についての見解も変化しているため、「41」という数はあくまで通例的なものだとお考えください。
それから、先の「ジュピター」をはじめとして、いくつかの交響曲には「ハフナー(35番)」「プラハ(38番)」といった標題が冠されていますが、これらもモーツァルトがつけたものではありません。
曲調や作曲地・エピソードなどに基づいてやはり後世につけられました。
モーツァルトの交響曲のうち、特に有名かつ重要な作品は、「三大交響曲」と呼ばれる第39番変ホ長調(K.543)、第40番ト短調(K.550)、第41番ハ長調(K.551)、もしくはこれに35番、36番、37番の3曲を加えた「六大交響曲」というのが妥当なところでしょう。
また、「小ト短調」と呼ばれる第25番も、17歳という若いモーツァルトの天才がその印象的な主題に迸っている名曲として頻繁に演奏されます。
この曲は、映画「アマデウス」で効果的に使われましたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
これらの評価に対して異を唱えるつもりはありませんが、ここでは「交響曲第29番イ長調 K.201」をみなさんにご紹介したいと思います。
K.201は1774年、ザルツブルクにおいて書かれました。
楽章構成および楽器編成はモーツァルトの標準的な交響曲の形式に則り、次のようになっています。
楽章構成
・第1楽章 アレグロ・モデラート(Allegro moderato)
・第2楽章 アンダンテ(Andante)
・第3楽章 メヌエットとトリオ(Menuetto/Trio)
・第4楽章 アレグロ・コン・スピリート(Allegro con spirito)
楽器編成
・弦4部(第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)
・オーボエ・ホルン
この曲には、後期の交響曲のようなスケールの大きさはありません。
しかし、モーツァルトのイ長調作品の特徴である、天国的な美しさが随所に溢れています。
静かな湖面にかかる霧が次第に晴れ、降り注いでくる光の階(きざはし)を一気に天上まで駆け上るがごとき、第一楽章冒頭の主題は、一度聴いたら忘れられないすばらしい旋律です。
この曲も比較的人気があるため、コンサートなどで耳にされた方も少なくないかとおもいますが、もしまだお聴きになったことがないのであれば、ぜひ聴いてみてください。
きっと気に入っていただけると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=X3j5f9ggN-4