今回は協奏曲の2回目として、管楽のための協奏曲を取り上げます。
モーツァルトの管楽協奏曲は、ホルン協奏曲(4)、フルート協奏曲(2)、オーボエ協奏曲(1)、ファゴット協奏曲(1)およびクラリネット協奏曲(1)が、完全な形で現存しています(※カッコ内の数字は曲数)。
この中でもっとも有名かつ重要なのは、最晩年に作曲された「クラリネット協奏曲 イ長調 K.622」と言って間違いなく、このジャンルはもとより、モーツァルトの全作品に範囲を広げても、最高の芸術性と完成度をみせています。
ですから、それをご紹介するのが王道なのですが、あまりにも有名、かつ重要な曲なので、ご存知の方も多いでしょうし、また後日、このサイトで改めて取り上げるつもりですので、今回はあえて他の曲にスポットライトを当てることにしました。
それは、唯一のオーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d)です。
今でこそモーツァルトの作品中でよく知られ、また、歴代の作曲家たちの手になる数あるオーボエ曲の中でも非常に高い人気を博していますが、この協奏曲が発見されたのは比較的最近、1920年のことでした。
つまり、モーツァルトの時代に演奏されてから長い間、人々の耳に触れることのなかった作品なのです。
作られたのは1777年で、以下のように典型的な協奏曲の構成をとっています。
第1楽章 アレグロ・アペルト(Allegro aperto)
第2楽章 アダージョ・ノン・トロッポ(Adagio non troppo)
第3楽章 ロンド:アレグレット(Rondo: Allegretto)
また、作曲の目的は、モーツァルト自身が「僕がフェルレンディスのために書いたオーボエ協奏曲が大喝采を博しています、」とマンハイムから父に宛てた手紙に書いていることから見て取れます。
ところで、このオーボエ協奏曲、調性が違うという点を除けば、実はフルート協奏曲第2番と全く同じもの。
これら2曲の関係は、本来オーボエのために作曲したものを、オランダの商人でフルート愛好家、フェルディナン・ド・ジャンからのフルート協奏曲の注文に応じるために作り変えたもの――という説が一般的です。
この真偽は定かでありませんが、曲の印象としては、やはりオーボエの特性にフィットしているように思います。
ともあれ、そのようなわけで、K.314というケッヘル番号をもつ曲は、フルート協奏曲とオーボエ協奏曲の二つがあるのです。
では、「オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d)」を実際にお聴きいただきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=eDrVtXPpuRI
ところで、オーボエ奏者には髪の薄い人が多いといわれます。
確かに、上の動画の独奏者フランソワ・ルルー、有名なハインツ・ホリガーをはじめとして、名だたる演奏家の頭を見ると、そのような気もしないではありません。
で、その理由ですが、オーボエという楽器の演奏にはわずかな息しか必要ないため、「思い切り吹きたい!」という欲求が溜まってそれが頭髪に影響してしまうのだとか……
嘘か、真か?