モーツァルト・カフェ|名曲・おすすめ作品・エピソードなど

不世出の天才作曲家W.A.モーツァルト。その名曲・代表作・おすすめ作品をはじめ、生涯や音楽上のエピソードなどをご紹介します。

変奏曲(バリエーション)

今回は変奏曲についてご紹介します。

 

便宜上、本稿を「作品ジャンル」カテゴリーに入れたものの、変奏曲とは、楽曲のジャンルの一つというより、曲の形式の一種を示す言葉で、ある旋律を「主題」として初めに提示し、さらにその主題をさまざまに変化させた「変奏」と呼ばれるいくつかの部分を続ける作品をいいます。

 

つまり、主題をT、変奏をV1, V2, V3, …, Vnとすると、変奏曲は

 

T→V1→V2→V3→…→Vn

 

ような流れで演奏されるのです(最後にもう一度主題が奏されることもあります)。

 

ちなみに、変奏は各国語で、伊:variazioni、独:Variationen、英:variations(いずれも複数形)となり、これらを覚えておくと、解説などを読む際、理解の助けになるかもしれません。

 


変奏の方法はさまざまで、旋律に装飾的な音を付加するほか、リズムやテンポ、また調などを変えることにより、多種多様な表情が生み出されます。

 

ここでおもしろいのは、変奏曲の主題として、作曲者が自分で用意する以外に、すでにある他人の楽曲の旋律が主題として使われるのも珍しくないということ。

 

よく、「~による」「~の主題による」という題名がついた変奏曲を目にするかと思いますが、これらは後者に当たるわけです。

 

 

 


さて、モーツァルトはこの変奏曲の名手で、数多くの作品を残しました。

 

独立した作品としてはもちろん、協奏曲やソナタなど、複数楽章で構成される作品の中の一つの楽章としても。

 

例えば、独立作品としては、幼少期の「"ヴィレム・ファン・ナッサウ"による7つの変奏曲」や、おなじみの「きらきら星変奏曲("ああ、お母さん聞いて"による12の変奏曲)」などがありますし、「ピアノ・ソナタ第11番」の第1楽章には変奏曲がおかれています(この曲の第3楽章は有名な「トルコ行進曲」です)。

 


モーツァルトの天才ぶり、エピソードについてはこれから何度もご紹介する機会があると思いますが、その一つが即興で変奏曲をつくり、さらに演奏する能力でした。

 

変奏曲の作曲や演奏には、ある意味、曲芸的な面がないわけではありません。

 

しかし、モーツァルトのすごいところは、たとえ即興で作った変奏曲であっても、それが十分に高い芸術性を兼ね備えた作品となっている点です。

 

モーツァルトの変奏曲が現在でも盛んに演奏されるという事実が、このことを如実に裏付けているといえるでしょう。

 


上に挙げた作品の内、2曲の動画をご紹介して本稿を閉じます(初めのものは、演奏の始まるまでに少し間があります)。

 

☆きらきら星変奏曲("ああ、お母さん聞いて"による12の変奏曲) ハ長調 K.265
作曲年:1781/82年(モーツァルト25, 6歳のとき)

https://youtu.be/xyhxeo6zLAM

 

☆ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331(K.300i)
作曲年:1780または81-83年(モーツァルト24または25-27歳のとき)
構成:
・第1楽章 主題(アンダンテ・グラツィオーソ)と変奏
・第2楽章 メヌエット
・第3楽章 トルコ行進曲 アレグレット

https://youtu.be/vp_h649sZ9A