協奏曲(concerto[伊・英・仏]、Konzert[独])は、一つまたは複数の独奏楽器がオーケストラと競演する形で奏される楽曲です。
一般に、協奏曲では独奏楽器が活躍する分、交響曲に比べて華やかなので、クラシック音楽にあまりなじみのない方でも比較的聴きやすいジャンルかもしれません。
モーツァルトはこの協奏曲においても数多の作品を残しました。
先にもご紹介したように、モーツァルトは作曲家と同時に演奏家(ピアニスト)としての顔も持っており、その両方の技量を遺憾なく発揮するのに、協奏曲は格好の素材だったのです。
したがって、モーツァルトの協奏曲のうち、ピアノ協奏曲が27曲ともっとも多く、このジャンルを代表するものとなっていますが、他にも5曲のヴァイオリン協奏曲や、数は少ないものの、フルート・オーボエ・クラリネットといった管楽器のための魅力溢あふれる協奏曲など、非常にバラエティに富んでいます。
今回はその中から、弦楽のための協奏曲を1つご紹介しましょう。
といっても、それはヴァイオリン協奏曲ではありません。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、すべて1775年、すなわち彼が19歳の時に書かれたものであり、いま少し円熟味に欠けている印象があります(もっとも、逆に溌剌とした魅力もあるのですが)。
それらヴァイオリン協奏曲の作曲から4年後の1779年、23歳のモーツァルトは「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364」を生み出しました。
スコルダトゥーラという、通常より半音高い調弦法により、力強く輝きにあるれた音色を響かせるヴィオラがヴァイオリンとともに奏でる旋律は、まるで漆黒の如き弦楽オーケストラの地に、同じ弦でありながら金銀の蒔絵を織り成してゆくよう。
そこに二管の響きが螺鈿のような美妙な輝きを添えます。
楽器の特徴を活かしてその魅力を発揮させるモーツァルトの手腕が(も)、遺憾なく発揮されているというべきでしょう。
構成は、協奏曲としてオーソドックスな以下の3つの楽章からなりますが、協奏交響曲(シンフォニア・コンチェルタンテ)と呼ばれるだけあって、全体的に普通の協奏曲より重厚な響きを具えているのが特徴。
さらに、短調をとる中間楽章後半に現れる、悲しみの中に生まれたひと時の諦念を思わせるフレーズ、また終楽章での、ヴァイオリンとヴィオラが競い合うように音階を駆け上がる部分など、聴きどころが絶えない名曲です。
第1楽章 アレグロ・マエストーソ(Allegro maestoso)
第2楽章 アンダンテ(Andante)
第3楽章 プレスト(Presto)
次の動画で、その魅力をご堪能ください。
https://www.youtube.com/watch?v=uAv48Ne5axA