モーツァルト・カフェ|名曲・おすすめ作品・エピソードなど

不世出の天才作曲家W.A.モーツァルト。その名曲・代表作・おすすめ作品をはじめ、生涯や音楽上のエピソードなどをご紹介します。

ケッヘル(ケッヒェル)番号

モーツァルトの作品につけられている「K.~」(あるいは「K~」「KV~」)という番号をご存知でしょうか?

 

これは、ケッヘル(または原語の発音により即してケッヒェル)番号と呼ばれるもので、モーツァルトの作品を作曲年代順に並べて付した番号です。

 


勘のいい方はお気づきと思いますが、ケッヘルというのは人の名前。

 

オーストリアの教育者にして植物学者・鉱物学者であり、音楽にも深い造詣をもっていたルートヴィヒ・フォン・ケッヘルは、モーツァルトの作品に関する年代記的調査・研究を行い、その成果として1862年にケッヘル目録(モーツァルト全作品年代順主題目録)を出版しました。

 

ケッヘル番号はこの目録に由来しているのです。

 


モーツァルトは1784年の途中から自分の作品を記録するようになったので、それ以降の曲の作曲年代は比較的はっきりしていますが、それより前の作品については、彼が残した手紙の記述や関係者の証言などからの類推によるため、新資料の発見や新たな調査手法の成果などで、番号が大きく変わることもあります。

 

このような事情から、ケッヘル目録は初版の発行後、数度の改定が行われており、特に、アルフレート・アインシュタインが中心となって1937年に刊行された第3版、1964年に出た第6版では大きな改訂がなされました。

 

そして、これらの版に準じた番号のみを記す場合、「K」などの右上にその版数を併記することも行われました。

 

しかし、初版に対する敬意、その番号が長年親しまれてきたという事実、そして新しい番号の煩雑さなどから、現在でも初版の番号が主に使われており、少し硬い、音楽事典や解説書などでは、括弧書きで第6版の番号を付加する形が採用されています。

 

例えば、「ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K.284(205b)」のように。

 

今後、モーツァルトの曲名に接する際は注意してみてください。

 


なお、ケッヘル目録に代表されるモーツァルトに関する論考、ベートーヴェン書簡集の編纂、オーストリア宮廷音楽の歴史についての研究などにより、ルートヴィヒ・フォン・ケッヘルの肩書には「音楽学者」も併せ冠されることとなりました。

 


ケッヘル番号と同じようなものとして、シューベルトのドイチュ番号(シューベルト年代順作品表題番号)、バッハのシュミーダー番号(BWV:Bach Werke Verzeichnis、バッハ作品主題目録番号)があります。

 

ただ、BWVは作曲年代順ではなく、ジャンルごとに付番されており、その点がケッヘル番号・ドイチュ番号とは異なります。