モーツァルト・カフェ|名曲・おすすめ作品・エピソードなど

不世出の天才作曲家W.A.モーツァルト。その名曲・代表作・おすすめ作品をはじめ、生涯や音楽上のエピソードなどをご紹介します。

音楽の冗談 K.522

モーツァルトが非常に遊び心に富んだ人であったことは、彼が残した多くの手紙や逸話、そしてモーツァルトの作品そのものからもうかがい知ることができます。

 

そのような遊びの精神に基づいて書かれた曲の一つが、「音楽の冗談(Ein musikalischer Spass) K.522」。

 

ジュピター(交響曲第41番 K.551)、戴冠式(ピアノ協奏曲第26番 K.537)等の標題が後代の命名なのに対し、「音楽の冗談」はモーツァルト自身によって付されました。

 

 

4つの楽章からなるこの曲は、後に作曲家のヒュッテンブレンナーが「村の楽士の六重奏(Dorfmusikantensextett)」と呼んだように、ホルン×2・ヴァイオリン×2・ヴィオラ・コントラバスという楽器編成で演奏される室内楽です。

 

作曲の動機ははっきりしていませんが、曲の随所に多くの作曲上の間違いがあり、無論、モーツァルトがそのようなミスを犯すはずはないので、当時の貴族のアマチュア音楽家や凡庸な作曲家を、この曲によって揶揄したのではないかといわれています。

 

 


では、K.522のどこがおかしいかを簡単にご紹介しましょう。

 


まず、上に挙げた楽器編成に関し、コントラバスが入っている一方、クラシック音楽の基本的な低音楽器であるチェロが抜けています。

 


次に、曲の構成・内容についてみてみますと、「音楽の冗談」は

 

第1楽章 アレグロ(Allegro)
第2楽章 メヌエット:マエストーソ(Menuetto: Maestoso)
第3楽章 アダージョ・カンタービレ(Adagio cantabile)
第4楽章 プレスト(Presto)

 

という構成をとっていますが、まず、当時は一般に冒頭の楽章にもっとも重きが置かれ、演奏時間もそれに応じて長いのが通例にもかかわらず、「音楽の冗談」の作者(モーツァルトが揶揄の対象とした作曲家であり、モーツァルト自身ではありません!)が選んだ主題はきわめて単純・単調なもので、かつそれをうまく発展させることができないため、あっさりと終わってしまいます。

 


続いて、第二楽章の発想記号もとても奇妙。

 

なぜなら、メヌエットは典雅なダンス音楽であり、軽やかに演奏されてしかるべきなのに、『「マエストーソ(荘厳に)」演奏せよ』と指示されているのですから。

 

第3楽章については、協奏的楽章があるのはいいとして、ちょっと聴いたところでは、「モーツァルトが本領を発揮したのかな?」という感じも覚えるものの、いくら何でも第1ヴァイオリンが出しゃばりすぎです。

 

その上、カデンツァ(?)の終わりにピチカートのボケというおまけが付いて、終楽章はロンド(輪舞)の主題でもっともらしく始まりますが、すぐに行き詰って各楽器が勝手な調の演奏を始め、やがて収拾がつかなくなってグダグダ――という幕切れとなります。


そのほか、弦楽器に彩を添えるはずのホルンが間の抜けた響きを奏でて曲をだらけさせたり、煩いほどのトリルの多様、不可解な転調……などなど。

 


以上、つらつらと書きましたが、音楽については「百読は一聴に如かず」です。

 

本曲の動画をご紹介しておきますので、実際にお聴きになり、そのおかしみを玩味なさってください。

https://www.youtube.com/watch?v=e1phuIEVvE4

 


なお、本記事は便宜上、「おすすめの名曲」にカテゴライズしましたけれども、あくまで「話のタネ」としてどうぞ。